改正街づくり三法(2006年6月)


□ 街づくり三法改正

□ 中心市街地活性化基本計画:「計画」というより「プログラム」

□ 長浜の場合

□ フォローアップ


街づくり三法は、制定から10年を経ずして新法へ衣替えした。「地方衰退を加速するまちづくり法改正」(日本経済新聞社説、2005.12.24)という批判も根強いなか、自治体へ「選択と集中」を迫る同法は、1998年法とは様変わりした強力な制度となった。クリエイティブタウン的には、街づくり会社が主役に躍り出たことが大きい。

街づくり三法(1998) 新街づくり三法(2006)
大店法(大型店の出店調整に関する特別措置法、1974)←百貨店法 廃止
大店立地法(大規模小売店舗立地法、施行は2000年から) 変更なし
中心市街地活性化法(中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律)*TMO(認定構想推進事業者)が中心 中心市街地活性化法(中心市街地の活性化に関する法律)*中心市街地活性化協議会が中心
都市計画法(1968) 改正(特別用途区域)

なお、2000年改正で、準都市計画区域と特定用途制限区域。非線引き区域でも一定規模の大型店が制限可能に

改正(郊外の土地利用規制を強化)

■街づくり三法改正

2006年6月、いわゆる街づくり三法が改正された。正確には、「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」が「中心市街地の活性化に関する法律」へ変わり、「都市の秩序ある整備を図るための都市計画法等の一部を改正する法律」によって「都市計画法」が改正された。大規模小売店舗立地法は変更ない。この間の動きを福川(2006)は次のようにまとめている:

政府の手続きとしては、商業サイドが、産業構造審議会流通部会・中小企業政策審議会経営支援分科会商業部会の合同会議が中間報告「コンパクトでにぎわいあふれるまちづくりを目指して」を2005年12月に、都市計画サイドが、社会資本整備審議会の「新しい時代の都市計画はいかにあるべきか(第1次答申)」「人口減少等社会における市街地の再編に対応した建築物整備のあり方について」を2006年2月1日にまとめ準備を整えた。

12月下旬、与党の改正案がまとまると、経済財政諮問会議の民間委員から「規制強化となるため、政府が目指す「小さくて効率的な政府」や構造改革に逆行する」と批判の声が上がり、日本経済新聞は「地方衰退を加速するまちづくり法改正」を社説に掲げて(12月24日)異を唱えた。一方、まちづくり三法をテーマにした自民党の会議に、約100名の議員が集まった。これは昔の米価を決める会議に次ぐ規模だという(加藤紘一、世界3月号)。加藤氏は、この動きを「大型店については静かにしていた議員たちも、事ここに至っては消費者も啓蒙しながら「町をつくる」という観点から考えなければならない、と声を上げはじめた」とまとめている。

一方、法案の記事と同時に、「郊外戦から市街戦へ」突入した出店競争が報じられている。2003年9月の、工業地域にあるシッピングセンターへのシネコン設置を許可しなかった高知市の行政処分を取り消す高知地裁判決には多くの関係者がショックを受けた。2006年5月、熊本市長はイオンの調整区域への出店申請を許可しない決定をした。新法は、潮目になるのだろうか。

改正の柱はふたつ。第一が用途地域制度の改正による郊外への大型店の立地規制強化、第二が中心市街地活性化の仕組みの変更。中心市街地活性化基本計画を新たに定め、TMOに代ってまちづくり会社の参加する中心市街地活性化協議会を設置しなければならない。とくに新法に伴う支援措置を得るためには、この新基本計画が内閣府に設置された中心市街地活性化本部の認定を受けなければならない。

ここで、まちづくり会社は「良好な市街地を形成するためのまちづくりの推進を図る事業活動を行うことを目的として設立された会社であって政令で定める要件に該当するもの」または「商業等の活性化を図る事業活動を行うことを目的として設立された一般社団法人等又は特定会社であって政令で定める要件に該当するもの」(第15条:中心市街地活性化協議会)、政令で定める要件は、大企業の出資等を制限する中小企業要件である。

■中心市街地活性化基本計画:「計画」というより「プログラム」

2007年2月の初回に承認されたのは青森と富山の2市のみ。5月11市、8月5市、11月5市で、旧中活法で、制定後あまり時間を経ず続々と基本計画が生まれたのと大きく様変わりした。

理由は認定のハードルが高いためである。当初は「あれは一県に一市」とはじめからあきらめる自治体も少なからずあった。国は、郊外の開発を野放しにしたまま中心市街地への補助金目当てに中心市街地活性化基本計画が定められていく旧法の体制を反省、郊外化か中心市街地かという政策の「集中と選択」を自治体に課した。ハードルとは具体的には以下のふたつ:

①自治体は準工業地域に大型店出店を規制する特別用途地区を定めなければならない(三大都市圏を除く)。国は都市計画法の改正によって、それまで商業施設の立地に制限のなかった第2種住居専用地域、準住居地域、工業地域で10,000㎡超の大型店を立地不可としたが、準工業地域については自治体の定める特別用途地区に委ねた。これがあたかも自治体の決意を試すリトマス試験紙のように働いた。

②基本計画は5年以内に実現可能なプロジェクトを計画するものでなければならない。従来の基本計画やTMO構想は、関係者の希望を並べたウイッシュ・リストであったが、それは許されない。基本計画は「計画」という名前であるが、限りなく実行を前提とした事業の「プログラム」に変ったのである。

現行(店舗) 改正後
第一種低層住居専用地域 50㎡超不可 同左
第二種低層住居専用地域 150㎡超不可
第一種中高層住居専用地域 500㎡超不可
第二種中高層住居専用地域 1,500㎡超不可
第一種住居地域 3,000㎡超不可
第二種住居地域 制限なし 大規模集客施設は、用途地域の変更または用途を緩和する地区計画の決定が必要
準住居地域
工業地域
近隣商業地域 制限なし
商業地域
準工業地域 制限なしだが、地方都市においては、特別用途地区を活用することを中活法の基本計画の国による認定の条件とすることを基本方針で明記
工業専用地域 用途地域の変更または再開発促進区の決定が必要 同左
市街化調整区域 原則不可。ただし計画的大規模開発は許可、公共公益施設(学校、福祉施設、病院等)は開発許可不要 大規模開発を含め、原則不可。地区計画を定めた場合は、適合するものは許可。 公共公益施設も開発許可要
非線引き都市計画区域

準都市計画区域の白地地域

制限なし 大規模集客施設は、用途地域の指定により立地可能。非線引き都市計画区域では、用途を緩和する地区計画決定でも立地可能

■長浜の場合

たとえば長浜では、郊外の大型店出店規制措置として、基本計画で「(バイパス沿いに広範に指定されていた)準工業地域を近隣商業地域などへ用途地域を変更するとともに、準工業地域における大規模集客施設の立地を制限する特別用途地区を都市計画決定し、あわせて大規模集客施設の立地を制限する条例を制定する」措置をとるとした。しかしそれを実行しなければならない。基本構想の議決を待って、都市計画マスタープランを改正し、中心市街地活性化協議会を設置し、用途地域の変更を都市計画決定し、2009年6月に認定にこぎつけた。基本計画作成の作業に着手してから約2年を要した。

長浜の郊外立地規制

■フォローアップ

2016年末現在、137市の計画が認定されている(平均すると1県あたり3市強だ)。初期に認定された計画は10年の期限がきたため、65市が二期計画の認定を受けている。計画はすべて内閣府のホームページでダウンロードできる。また、自己評価として、毎年のフォローアップ、計画終了後の最終フォローアップが義務付けられており、その結果も公表されている。

 再び長浜を例にとると、I期の最終フォローアップは次のようである。Ⅰ期計画では、目標③居住人口にかかわる事業は未着手に終わった。それ以外は事業は着手されたが、数値は思うように上がらなかった。

Ⅰ期(2007.5〜2013.3)計画の目標と達成状況

目標 目標指標 基準値 目標値 最新値 達成状況
①活力と賑わいに満ちたまちづくり 歩行者・自転車通行量 32,240 人(H16-20) 32,700 人

(H25)

27,270 人

(H25.10)

②活力と賑わいに満ちたまちづくり及び歴史文化と薫り高い暮らしが息づくまちづくり 宿泊者数 309,300 人

(H19)

339,000 人

(H25)

366,800 人(H26.1)
③歴史文化と薫り高い暮らしが息づくまちづくり 居住人口 10,672 人

(H20)

11,000 人

(H25)

9,771 人(H26.3)
A:計画した事業は概ね予定どおり進捗・完了し、最新の実績で目標値を超えることができた
:計画した事業は予定どおり進捗・完了せず。しかし最新の実績で目標値を超えることができた
B:計画した事業は概ね予定どおり進捗・完了。最新の実績で基準値は超えることができたが、目標値に及ばず
:計画した事業は予定どおり進捗・完了せず。しかし最新の実績で基準値を超えることができたが、目標値に及ばず
C:計画した事業は概ね予定どおり進捗・完了。しかし最新の実績で目標値および基準値にも及ばず
:計画した事業は予定どおり進捗・完了せず。最新の実績では目標値および基準値にも及ばず

Ⅰ期(2009.6〜2014.3)の事業

主要事業 位置付け 実施 目標

目標② 目標③
ⓐ黒壁スクエアおよび中心商店街魅力強化事業(㈱新長浜計画)
ⓑやわた夢生小路商店街活性化事業(神前西開発㈱) 達成
ⓒ朝日町西部地区地域商業活性化事業(神前西開発㈱)
ⓓ旧郵便局跡地整備事業(民間事業者)
ⓔグルーンホテル Yes 長浜みなと館整備事業(民間事業者)
ⓕ中心市街地共同住宅供給事業(民間事業者)
ⓖ町家再生型まちなか居住プロジェクト(まちづくり会社)
目標①:歩行者・自転車通行量
目標②:宿泊者数
目標③:居住人口

II期の定期フォローアップでは次のような見通しが示されている。目標達成状況の見通しがすべて①で、Ⅰ期の達成状況が宿泊者数以外はCあるいはであったのと対照的である。:

Ⅱ期(2014.4〜2019.3)計画の目標と達成状況

目標 目標指標 基準値 目標値 最新値 前回の見通し 今回の見通し
①活発に人が行き交うまちの実現 歩行者・自転車通行量 35,018 人

(H24)

36,800 人

(H30)

31,434 人(H26)
②新たな交流を生み出すまちの実現 宿泊者数 410,000 人(H24) 420,000 人(H30) 433,500 人(H26)
③暮らしやすいまちの実現 市全体に占める中心市街地の居住人口の割合 8.04%

(H25.3)

8.17%

(H31.3)

8.00%

(H27.3)

① 取組(事業等)の進捗状況が順調であり、目標達成可能であると見込まれる……………………………………………………… 2点
② 取組の進捗状況は概ね予定どおりだが、このままでは目標達成可能とは見込まれず、今後対策を講じる必要がある 1点
③ 取組の進捗状況は予定どおりではないものの、目標達成可能と見込まれ、引き続き最大限努力していく…………… 1点
④ 取組の進捗に支障が生じているなど、このままでは目標達成可能とは見込まれず、今後対策を講じる必要がある 0点

Ⅱ期(2013.6〜2018.3)

主要事業 位置付け 実施 目標

目標② 目標③
ⓗ長浜駅南地区第一種市街地再開発事業(個人施行者㈱平和堂) 6(3)
ⓘ長浜駅東地区第一種市街地再開発事業(市街地再開発組合)
ⓘ長浜駅北地区整備事業(民間事業者) 6(3)7(3)
ⓚ(仮称)元浜町 13 番街区第一種市街地再開発事業(市街地再開発組合) 6(3)7(3)
ⓛ長浜浪漫パスポート事業(公益社団法人長浜観光協会) 6(3)7(3)
ⓙ体験型観光推進事業(一般社団法人北びわこふるさと観光公社) 7(1)
ⓚ盆梅展魅力強化事業(長浜市指定管理者) 7(4)
ⓛライフスタイルツーリズム事業(一般社団法人北びわこふるさと観光公社) 5(2)①
ⓜ町家活用型まちなか居住推進事業(長浜まちづくり㈱/長浜市) 5(2)①
ⓝまちなか居住推進事業(まちなか住宅建築助成)(長浜市) 5(3) 工事中
ⓞまちなか居住推進事業(まちなか空き家再生促進助成)(長浜市)
ⓟまちなか居住推進事業(まちなか共同住宅建築助成)(長浜市)
目標①:歩行者・自転車通行量
目標②:宿泊者数
目標③:市全体に占める中心市街地の居住人口の割合
■参考文献・資料
*『季刊まちづくり』13(0701)特集:コンパクトシティの可能性と中心市街地、2006. 12.1
この特集は、2006年6月の街づくり三法改正を受けて編まれた。このころ高松では、A街区の工事が1月の竣工をめざしてたけなわであり、計画チームと地元では、BC街区の小規模連鎖型再開発へ向け、タウンマネジメント・プログラムの作成を行い(2005年度戦略補助金「高松・丸亀町タウンマネジメント・プログラム構築事業」、2006年6月商店街で決定)、BC街区の建物の計画・設計のスタディを繰り返していた。特集では、街づくり三法改正そのものとともに、それと表裏に進む高松丸亀町の記録と二本立てになっている。前者の目次と著者は以下のようである:
  1. コミュニティに根ざした中心市街地の再生(福川裕一)
  2. 新まちづくり三法における都市計画のパラダイム転換(明石達生)
  3. まちづくり三法:(主にゾーニングの改正にみられる)改正後の課題について(福本佳世)
  4. 中心市街地活性化法改正の意図を聞く(後藤久典中小企業庁商業課長):制度改革の経緯と今後の対応(編集部)