3ポイントアプローチ


□ ポイント❶[デザイン]

□ ポイント❷[ビジネス]

□ ポイント❸[スキーム]


クリエイティブタウンの実現には、3つの柱を欠くことができない

①デザインの柱:コンパクトで,安全で美しい町をめざす.

歴史的な集落の位置に中心市街地をコンパクトシティとして復興することやかつての市街地を自然や農地に戻すゾーニングを定め、デザインコードを合意して、美しい町並みを再生し豊かな公共空間を生み出していく。

②ビジネスの柱:町を地域の産業の核にしていく

再生した町並みを中心に、周辺地域と連携して、生活スタイルへの誇りを産業に展開していく.ライフスタイをブランド化し産業化していく。

③スキームの柱:まちづくり会社が核となる

事業計画、資金調達、制度の活用などスキームに関する数多くの課題の中で、肝となるのは、コミュニティに根ざしたディベロッパー「まちづくり会社」である。

図 12:3ポイントアプローチ

 

□ ポイント❶[デザイン]

コンパクトな町へ、都市を造る建築へ

■コンパクトな町へ:既成市街地(中心市街地)を再生し、市街地の郊外化を抑制し、農地・緑地の再生・保全を図る

東日本大震災で大きな被害を受けたのは戦後拡大した市街地であった。人口が減少するこれから、これら郊外をそのまま復興することの意味は乏しい。人減少が始まり、市街地や集落の物理的な縮退(シュリンク)が不可避となった今日、この状況を奇貨として美しい田園や町並みとそこで営まれる豊かな生活を回復する「スマート・シュリンク」を実現する

■市街地では、コルビジェが描き世界がめざした”Towers in Space”モデルの反省に立ち、人間的で快適な公共空間を生み出すことが世界の潮流となっている

アメリカのスマート・グロース、ニューアーバニズム、イギリスのアーバンビレッジ・アーバンルネサンス、パリはじめフランスの各都市における一連の都市計画制度改革など。クリエイティブタウン推進コアメンバー会議では、国交省・武藤祥郎氏からアメリカのTODにみるまちづくりのデザイン論を学んだ。

■都市を造る建築へ :快適な都市空間の原理を歴史的な都市に学ぶ。歴史的な都市では個別の建築が集まって心地よい都市空間をつくり出しており、洋の東西を問わず次のような共通原則が浮かび上がる。

*()内は、Christopher Alexander: Nature of Order: Book One: The Phenomenon of Lifeの“Fifteen Fundamental Properties”

①通り(オープンスペース)が囲まれている(Positive Space)

②通りから二次的、三次的オープンスペース(横町、路地)へ段階的に続く(奥行、回遊性)(Levels of Scale: Hierarchy of Open Space)

③建物は孤立していない町並み型=中庭型(Not Separateness)

④道幅と建物の高さのバランスがよい(Good Shape)

⑤「通り→店先→店→住宅(玄関→居間→寝室)」という、公から私に至る段階的な構成(Gradients)

⑥建物の内外をつなぐ空間・装置(アーケード、庇、窓)が豊かで美しい。それぞれの文化の特徴がもっともよくあらわれるところ(Deep Interlock and Ambiguity, Boundaries)

⑦心地よい繰り返し、秩序と多様性の両立(Alternating Repetition, Local Symmetries, Roughness)

■以上の共通原則を踏まえ、地域固有のデザインコードを見いだし、「個別の行為」が美しい「全体」をつくりあげるシステムを組み立てる

 

□ ポイント❷[ビジネス]

ライフスタイル・ブランド化事業を展開

■再開発などによって生み出した床や空き店舗などに、地域のライフスタイルを支え・育み・強め・発信する施設や店鋪をつくり出す。

まちの再生とあわせて、再生された町並みを舞台に、①地域の人びとのライフスタイルを支え・育む生活サービス施設、②地域の美味しいもの、季節の楽しみ方、祭りや催事、生業など、固有の価値観に裏打ちされたライフスタイルを発信し、生活産業として創出する=「ライフスタイルのブランド化」を実行する店鋪や市場等をつくる。

商業の再定義

■このような店鋪は、単にモノを売る施設ではなく、市場の動向を見ながら、地域の資産を発掘し、磨きをかけ、日本・世界の良いモノと組み合わせ、地域に新しい産業そして雇用を創出する「悉皆屋」の役割を果たす。
■このような施設・店鋪が、適切な家賃負担で活動できるよう、開発のスキームが組まれる必要がある。これはポイント❸[スキーム]の課題である。
■このような事業には、同じ志をもち実践する他地域との連携が効果的である。すなわち、東京を経由しないネットワークを組み立てる。

このような連携の上で、積極的な海外への訴求を視野に入れる。

ライフスタイルブランド化の戦略:課題▶︎解決策▶︎事業

 

 

□ ポイント❸[スキーム]

共同で土地を利用・開発、まちづくり会社がマネジメント

■地権者がディベロッパーとしてまちづくり会社を設立、土地所有はそのままに、共同で土地を開発、合理的な土地利用を実現。

まちづくり会社は、再開発事業を行うディベロッパーであると同時に、事業後の町の運営を持続的に行うマネジメント組織である。実際には、固有の機能をもった複数のまちづくり会社が連携する体制を検討する。

*共同ビル化が常に最適解ではない。個別建物による町並み整備か共同ビル化かはそれぞれの都市や町の規模による。

■再開発制度を新しい考え方で活用、再発制度再編も視野に

都市再開発法にもとづく市街地再開発事業は、権利調整の仕組み、権利の移行に伴い発生する税をかけない仕組み、補助制度などが、かなりしっかりと整備されている。しかし、高度成長期に組み立てられた再開発制度が人口減少時代に適合しづらくなっていることも事実。再開発制度そのものの再編成も視野に。

■財源が課題

開発のリスクを誰かが負わなければ開発は進まない。補助金からファンドへ、公的支援の発想の転換が必要

再開発制度を新しい考え方で活用

 

 

「デザイン」は「スキーム」を必要とするが、「スキーム」で「デザイン」ができるわけではない

3つの柱は、表裏の関係にあり、いずれも欠くことはできない。ただしスキームは黒子に徹する必要がある。たとえばクリエイティブタウン実現には、現段階では「土地の所有と利用の分離」「定期借地方式の再開発」「まちづくり会社」などのスキームが推奨されるが、これらの「スキーム」は、すべて必要なデザインを成立させ実現するために工夫されたものであって、断じてその逆ではない。

このことを忘れるととんでもないことが起こる。たとえば、皆さんがこんな町にしたいという想いを描いたとしよう。その実現のために実務のプロと自認する専門家に登場を願うと、十中八九夢はしぼむ。専門家が「これならできます」と、まったく別の案をもちだすからだ。専門家は、やるべきことからではなく、やれることからデザインするからである。

デザインは空間を作る行為である。空間は人と人とのコミュニケーションそして社会関係を律する。住宅で言えば家族成員間の関係を、町並みで言えば家族と家族、住民と来訪者の関係を規定する。そこでは、空間のデザインが決定的な役割を果たす。中心市街地再生の最大の目標は、そこがその都市の市民が集い・働き・憩う場所になることである。具体的には、公共空間=通りを豊かで快適な市民生活の場とすることが目標となる。この目標を達成するのはデザインであって、スキームではない。

スキームの背後にある制度は、立案者の想像力に縛られている。「デザイン」への意思を欠いたまま、制度の想定に従って率直に「スキーム」を組んでも、課題としたデザインの基本テーマは達成されない。

逆に言えば「デザイン」を実現するためには、「スキーム」を工夫できることが必須である。ここで、地域が事業主体(まちづくり会社=ディベロッパー)であることが、みずからスキームを工夫し、めざすデザインを実現することができるという点で決定的に重要になってくる。

美しい都市空間を実現するためには「建築の自由を原則とし、建築の自由の原則から生ずるさまざまな障害について、これを制約する」から「建築の自由を原則とした上で、この中から悪質なものを排除し、良質なものを援助する」という段階を超えて「建築の不自由を原則とし、良質なものだけが建築される」段階へ踏み込まなければならない。その段階は、単に人々が共有する適切なルール(デザインコード)があれば達成されるわけではない。多くの場合、敷地を共同で利用しなければ、そのデザインは実現しない。デザインコードは、抽象的に観念されるものではなく、事業性を確認しつつ、具体的な設計(実践)をしてみないことには確定しない。「建築の不自由を原則とし、良質なものだけが建築される」段階とは、建築の自由を前提とした建築協定や地区計画の世界から、個別所有の限界を超える「総有論」の世界へ踏み込むことにほかならない。

敷地を共同で利用しない場合でも、個々の建築活動が限られた環境を共有し、ひとつの有機体としての町並みを生成していく総有のシステムが必要である。そこでは環境の共同利用が成立しているのである。ここでも、保存というデザインを実現するためには適切な事業のスキームが不可欠である。この意味でデザインとスキームは表裏である。しかし、「デザイン」は「スキーム」を必要とするが、「スキーム」で「デザイン」ができるわけではない。