石巻市立町二丁目5番地区プロジェクト(2016月9月竣工)


石巻のまちなか復興再開発プロジェクトの第2弾、大正5年に建てられた平屋建ての木造和風建築と土蔵、そして美しい庭が現存する敷地を核に隣接する地権者が参加して、住宅、店舗、高齢者福祉施設を整備。石巻のメインストリート・立町に面した主棟では、ライフスタイルショップ「あさって」が店を構える。

メインストリート・立町通りの再生へ

立町通りは、各銀行の支店が並ぶ石巻のメインストリート。しかし、震災前から賑わいを失っていた商店街は、震災で一層の打撃を受け、今も空き店、空地が目立つ。2年前に痛んでいたアーケードが撤去され、再起が期待されるが、あさってがそのトリガーになることが期待されている。

核となる秋田屋の建物は、今回の震災にも耐え、浸水も床下にとどまった。地権者は、震災前から、この家屋と庭園の南側の表通り沿いに店舗棟、北側に高齢者用の住宅棟、西側に平場の駐車場を配置する整備案を考えていた。そこで、低層部では木造建物や庭もいかしてライフスタイルショップを構成、二階を避難フロアとして回廊をめぐらせ三層程度の住宅を配置する案を提案した。

パース

ライフスタイルショップについては、2013年7月に放映されたNHKの番組「復興サポート:みんなで元気な商店街をつくろう―宮城・石巻」で、石巻中心市街地再生のテーマをライフスタイルのブランド化と見定め、参加者とともに、この再開発で生まれる店舗の計画を練った経過がある。ビルの名前は「きょうまち」、店舗を所有・運営するまちづくり会社は「あす街」、商業部分の核となるライフスタイルショップは「あさって」。命名には、ライフスタイルショップが牽引する石巻復興への願いがこめられた。

再開発の話し合い

検討の開始は2011年10月ごろ。2012年2月末には再開発準備組合の設立に至り、2013年3月都市計画決定、2015年6月着工、2016年9月に竣工した。

■デザイン:

震災前の計画は分棟で、かつ店舗棟は1~2階建てに抑えられていたため、必然的に住宅棟が高層となり、平屋建ての保存家屋と調和しにくい計画となっていた。そこで、石巻モデルを適用した計画へ改め、全体としてバランスのとれた棟配置を実現しようとした。

立町通りぞいと北側の新田通りぞいに4~5階建ての棟を配置して町並みをつくり、街区内部には二階の居住兼避難フロアの上に三層の住宅を二棟配置する。集会室も含めると、計6棟からなる分棟型で、回廊をめぐらせ連結する。全部で53戸の住宅ができるが、うち立町通りぞいの21戸は災害復興住宅である。その一階は石巻におけるライフスタイルのブランド化を実現する旗艦店ほか、新田通りぞいの一階はデイケアセンターほか、その他は駐車場に使う。

建物平面図:1f
建物平面図:2f
2階中庭

■スキーム:

定期借地方式の第一種市街地再開発事業。住宅は53戸で、うち立町通りぞいの棟の二階以上、21戸が公営住宅。ほかは地権者の3戸を除き保留床で、特定業務代行者が買い取り。その後、定期借地権付き分譲住宅「デュオヒルズ石巻」として分譲。一階は、立町通り側にライフスタイルショップ「あさって」ほか2店舗、新田通り側にデイケアセンターと昔からのテナントの床屋さん。店舗は権利床と保留床からなり、後者を地権者が設立したまちづくり会社「あす街」が取得、同社が全体を運営し、地権者へ配当を支払う。資金は、グループ補助金と高度化資金が活用された。

再開発スキーム

■ビジネス(ライフスタイルのブランド化):

立町通り側に、石巻・東北のうまいもの・よいものを集めたライフスタイルショップ、新田通り側に高齢者施設を計画。大正5年の木造和風建築と土蔵、美しい庭とともに運営する。

ライフスタイルショップについては、2013年7月に放映されたNHKの番組「復興サポート:みんなで元気な商店街をつくろう―宮城・石巻」で、参加者がこの店舗をどのような店にするかをめぐってワークショップが行われた経過がある。講師は西郷真理子さん、アドバイザーに、食環境ジャーナリストの金丸弘美さん、高松丸亀町・まちのシューレ963の水谷未起さん、ぶどうの樹の■■さん。ひとわたり議論した後の番組ナビゲータ・迫田朋子さんの締めくくりが感動的であった:

みんなのアイデアが詰まった商店街のイメージが出来上がりました。ここは石巻の人びとが愛し、誇りにしている品々が集まる宝箱、そして石巻を訪れる人びとがその魅力を発見する場所です。中庭ではお祝いの行事が行われ、郷土料理を囲む人びとの笑顔をお年寄りたちが暖かく見守っています。周りの住宅には、仮設住宅から多くの人びとが移り住み、新しいふるさととします。ここを復興の先頭として石巻の商店街が生まれ変わります。

準備は、高松丸亀町・まちのシューレ963からマネージャの水谷未起さんが支援に入って進められた。周辺地域をくまなくまわってクラフトや食品を渉猟し、店舗の構想を練ると同時に、石巻のひとびとも高松を訪れて、研鑽した。そしてまとめられた方針は以下の通り:

❶石巻、宮城の生活文化を発信する

仙台との距離感を踏まえ、差別化。石巻~宮城沿岸部の豊な食がキーコンテンツ、とれたて、つくりたての海産物を味わってもらう

❷東北広域のよきクラフトを集積する

東北広域に点在する手仕事、クラフト、民芸は数が多くエリアも広い為、いいものを1箇所に集めることによって広域からの集客をめざす。一定のフィルターを通して集めた東北のいいもの。宮城県内の作り手を中心に、地域に根ざした手仕事を探し出す。カゴ、漆器、布、木工、民芸 など風土や地域性から必然的につくり続けられたものと東北で活動するクラフト分野の若手の作家を糾合。

❸地域の素材をいかした、新しい商品の開発

今の暮らしの中で、使い手に必要とされるには、生活者の目線が必要。「作り手」と「使い手」を結ぶ「売り手」が、商品開発に加わることで、生活者のニーズにより近づいていく。

❹より広く、根っこを伝える為のイベントの実施

実際に味わってもらい、触れてもらう機会をつくる。よりよく知ってもらうイベントを開催していく。たとえば、地元の素材をつかった浜のお母さんのお料理教室、作家から直接話が聞ける手仕事の体験ワークショップ、地元の食材を使った、プロの料理人によるお料理会。

このような経過を経て、店舗を、地域のうまいもの、レストラン&カフェ、ライフスタイル・グッズ、クラフト、ファッション・小物、ワークショップなどの部門から構成すること、「きょう・あす・あさって、日々の暮らしを、おいしく・豊かに・心地よく」をテーマに、店名を「ASSATE(あさって)」とすること、うまいものは「石巻うまいものマルシェ」として、市内の10の食品加工業者が構成する石巻うまいもの(株)が、レストラン&カフェは「日高見レストラン」として日高見ファクトリー(株)が運営することなどを決め、2016年11月25日、食品部門(石巻うまいものマルシェと日高見レストラン)がプレオープンした。来春には、古い住宅と庭園を含めグランドオープンの予定。

開店直前、意気込むスタッフ
あさって外観

写真 66:あさってのオープンカフェ

あさって外観
あさって外観

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あさって内部/レストラン日高見
あさって内部/クラフト
あさって内部/うまいものマルシェ

 

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■データ

件名:(仮称)石巻立町二丁目5番地区再開発ビル

所在地:宮城県石巻市立町二丁目12番1他

建物の用途:共同住宅、店舗、高齢者福祉施設(デイケア)、附属駐車場

構造:RC造、一部S造、地上5階建て。2階から上の住宅はボイドスラブを使った薄肉ラーメン構造

高さ:18.70m

施工区域面積:3069.95㎡(地形図計測)、

敷地面積:2601.43㎡(実測図による)

建築面積:2014.51㎡

建蔽率:77.44%

延べ面積(容積対象床面積):4645.84㎡

容積率:178.59%

用途別床面積:             共同住宅:3241.96㎡、店舗:650.72㎡、高齢者福祉施設:391.08㎡、付属駐車場:525.74㎡

接道:南側:国道398号線(15.00m)、北側:市道 鋳銭場・住吉町一丁目1号線(9.11m)

戸数等:店舗等4区画(権利床と保留床)、住宅53戸(権利床と保留床)、うち21戸が復興公営住宅

駐車場:12台

駐輪場:82台

■都市計画

地域地区:商業地域、準防火地域、高度利用地区(立町二丁目5番地区)

指定建蔽率:80%

指定容積率:500%

高度利用地区:建蔽率の最高限度:80%、建築面積の最低限度:200㎡、容積率の最高限度:500%、容積率の最低限度:150%、壁面の位置:道路境界線より1.0m

■経過

2012年2月■日:再開発準備組合設立

2013年3月22日:高度利用地区および市街地再開発事業の都市計画決定(高度利用地区は変更)

2015年■月■日:再開発組合設立

2015年■月■日:権利変換認可

2015年6月4日:着工

2016年9月■日:竣工