まちのへそ(2015.5)
2015年5月11日、経済成長フォーラム(座長:大田弘子政策研究大学院教授)の「地方創生への緊急提言:“街のヘソ”をつくろう」が公表された。この中で、クリエイティブタウンは「街のヘソ」して全面展開された。
http://www.economic-growth-forum.jp/pdf/jegf_survey150511_02.pdf
経済成長フォーラムは、日本が新たな成長分野を創り出すことを目的として2012年5月25日に発足した提言機関。座長は大田弘子政策研究大学院教授、コアメンバーは高橋進日本総合研究所理事長と冨山和彦経営共創基盤代表取締役CEO。2014年度は、地域サービス産業生産性検討会として開催され、クリエイティブタウン推進会議から、理事長の薄井充裕と専務理事の西郷真理子が参加した。また理事長の福川裕一もゲストスピーカーとして参加した。
会議では、西郷が「日本の各地には、自然の恵みをいかした、それぞれの地域固有の生活スタイルが花開いている。地域の中心となる美しい町を再生し、そこに生活スタイルに根ざした産業を起こすことが地方創生のキイとなる」として、そのためには以下が必要であるという見解を展開した:
- まちの「へそ」となるメインストリートからスタートする
- 「へそ」は数百メートル
- 「へそ」に集中投資
- 集中投資が地域循環をうみだす仕組みをつくる
- かつての大店(おおだな)にならって、地域の生活のほこりを産業にする仕組みをつくる。利益は地域に還元する
この見解は、サービス産業の生産性向上というフォーラムのテーマと重なり合い、「“街のヘソ”をつくろう」という提言がまとめられるに至った。その考え方は、以下の「提言のねらい」に簡潔にまとめられている。
人口減少下の日本経済が成長を持続するには、GDP の 7 割以上を占めるサービス産業の生産性を向上させることが不可欠である。地方の産業の中心がサービス産業にあるいま、サービス産業の生産性向上は、地方経済の活性化と密接に関連する課題でもある。
地方再生とサービス産業活性化の2つの課題を解く鍵は、一定のエリア内に人と企業とが集まってくる魅力的な拠点を作り出すことにある。サービス産業には売り手と買い手が同じ場所に存在する業種が多いため、「密度の経済」を実現することが不可欠だからである。ここではその拠点を“街のヘソ”と呼ぶ。
では、“街のヘソ”を作るにはどうすればよいか。これまでの地域開発は、もっぱら大規模な中心市街地を対象にした上地区画整理事業や市街地再開発事業であった。しかし、人口が減少に転じ、それぞれの地域で地域の実情に合ったまちづくりを行うには、これまでとは異なる新たな手法が必要である。
このような一定エリアの開発は、すでにいくつかの地域で先駆的に行われている。中心市街地活性化法に規定された「まちづくり会社」などを活用して、エリアの魅力と価値を高めるための多様な取組みが行われている。しかし、そのための制度や手法は十分に整っておらず、ごく少数の成功事例にとどまっているのが実情である。
エリア開発は、都市再開発のように何十年もかかるものではなく、短期間で成果が出るため、そのための手法が整備されれば、これまでの成功事例を全国に横展開することが十分に可能である。
また、こうした手法で重要なのは、ハードのインフラ整備より、地権者の権利調整を行う ノウハウや、投資をよびこむための運営手法など、ソフトのノウハウである。したがって、制度の整備と併せて、こうしたソフトのノウハウを持った人材の育成がきわめて重要である。各地域で優れたエリア・マネジメントがなされ、まちづくりのプロフェッショナルが各地域で活躍するための環境整備が必要である。
具体的な提言は以下の四点である:
提言1【制度】:市街地整備事業の「第3の柱」として地区計画を位置づける
提言2【手法】:土地の所有権と利用権の分離を行いやすくする
提言3【制度】:官民の資金のベストミックスを実現する
提言4【制度】:エリア開発のための専門的人材を育成する
2015年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略 (2015 改訂版)」には、この提言が随所に盛り込まれているが、「街のヘソ」という言葉自体は、「3. 政策パッケージ」「(4)時代にあった地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」」「(ア)まちづくり・地域連携」「c. 人の流れと活気を生み出す地域空間の形成」の項に【施策の概要】として以下のように記載されている:
地域の「稼ぐ力」や「地域価値」の向上を図るには、一定の地域に人と企業が集積することによる「密度の経済」を実現することが有益である。このため、ひとの流れと活気を生み出す「まちのヘソ」とも言うべき地域空間を形成する。その際には、多様なサービス産業の可能性や新たな需要の創出、更には地域への愛着や誇りを醸成する観点に着目し、人の集う「まちの賑わい」づくりを進める。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/pdf/h27-12-24-siryou2.pdf