新たな再開発のあり方に関する提言(2003年)


都市再開発法にもとづく市街地再開発事業はクリエイティブタウン実現の主要な手段のひとつ。しかし、1969年制定の同制度を、もはや右肩上がりとは言えない経済下で、特に地方都市で活用するには相当の創意工夫が必要だ。(社)再開発コーディネータ協会の『新たな再開発のあり方に関する提言』(2003年5月)は、そのための拠り所となった。

 同提言はこれまでの再開発を次のように総括する:

①立地や採算の点で優位な一部の場所で、たとえば 0.5ha 程度の事業化が高容積でなされる

②1カ所の事業が地域のポテンシャルを顕在化、吸収することで周辺地域の事業化が進まない。たとえば、住宅共有可能戸数が区域全体で 100 戸程度とした場合、最初の事業で使い切ってしまう

③事業の組み立ては、余った床の大規模な処分によってまかなう、土地を含めた売却型

④大規模な床を必要とするキーテナントなどの動向に、事業化や完成後のビル経営が大きく左右される

新しい再開発のあり方

 新しい再開発のあり方を次のように提案する:

①一部の場所でポテンシャルを使い切るのではなく、5ha全体で使っていこうという発想

②複数の事業を連続的に実施して、地域のポテンシャルを有効に活用していく

③たとえば、住宅供給可能戸数が区域全体で100戸程度とした場合、それを複数事業で実現していく

④事業の組み立ては、従前の所有者の共同出資による「まちづくり会社」が建設し、経営する自力経営型

⑤ケアハウス、デイサービスセンター、保育所等比較的小規模な施設や、親世帯・子世帯の隣居・近居に適した住宅などを市街地全体に分散して配置し、賑わいのある商業空間を形成できる

新しい再開発のあり方

 都市再開発法に基づく市街地再開発事業は、権利調整の仕組み、権利の移行に伴い発生する税をかけない仕組み、補助制度などが整備されており、都市計画で定め、都市計画事業として行われる。複雑だが、完備された制度である。また、歴史があって安定した制度である。

 ただし、1969年にいわゆる都市三法のひとつとして制定された都市再開発法は、本来都市空間の「高度利用」を目的に、そこからの開発利益を事業費に充てる構造で組み立てられていることから、少子高齢化、人口減少、市街地縮退の局面を迎えている地方都市では必ずしも馴染まない。それでも「身の丈にあった再開発制度」など、新しい事態への対応が図られてきた。「提言」は、このような再開発制度の課題を率直に総括し、新しい手法を提案している。この提言をもとに、これまでの再開発の組立て方と新たな再開発の組立て方を比較すると図のようになる:

これまでの再開発の組立て方と新たな再開発の組立て方
■参考文献・資料

*(社)再開発コーディネータ協会(2003)『新たな再開発のあり方に関する提言』2003.5

http://www.urca.or.jp/urca/teigen/pdf/17teigen11.pdf